人の姿も車の台数も少なくて、なんだか不思議な感覚がした。
見慣れた景色なのに、別世界にいるみたい。

そう思うとなんだか楽しい気持ちになってきて、奈穂はスキップするように学校へ向かった。
こんな早い時間だから門が開いているかどうか心配だったけれど、門はすでに開いていた。

職員室と事務室の明かりもついている。
人がいたことにホッとすると同時に、今から宿題をするのだと思うと重たい気持ちになってくる。

お母さんが言う通り、今度は絶対に忘れ物なんてしない。
そう心に誓って階段を上がっていく。

そして2年B組の教室まできたとき、中から物音が聞こえてきて奈穂は立ち止まった。
こんな早い時間に生徒が来ているとは思えないから、きっと先生がなにかしてるんだな。

そう思って薄くドアを開いて中を覗き見た。
そこにいたのは先生ではなく、クラスメートの一浩だったのだ。

一浩はクラス内でも派手な乱暴者で有名で、学校に遅刻してくる常習犯だった。
そんな一浩がすでに登校してきていることに驚いて奈穂は目を見開いた。