☆☆☆

帰り道、自転車をこぎながらも奈穂の心臓はドキドキしていた。
クラスメートが万引する瞬間を目撃してしまい、動揺もしていた。

豊はどうしてあんなものを盗んだんだろう。
本当に欲しくて盗んだのかな?

奈穂には豊がどうしても欲しくて盗んだようには見えなかった。
それに、豊の家は確かとても裕福だったはずだ。

考えれば考えるほどに奈穂の心は沈んでいく。
豊の万引を目撃してしまってからしばらく店内に残っていた奈穂だが、結局豊がお店に戻ってくることはなかった。

そして外に出たときにはもう豊はいなかったのだ。
目撃したことを誰かに相談した方がいいんだろうか……。

そう思っている間に家についた。


「ただいまぁ」


暗い気持ちでキッチンへ向かう。