席に戻ったミオに絢香は近ずいて

「課長は私が狙ってるんですから
先輩は手を出さないでくださいね。」
と念押ししてくる始末
そんな絢香にミオは言った。

「絢香は・・・」
言いかけたミオの顔を絢香は見上げてくる。


いや・・・
やめとこう忠告しても聞く気もないし信じないだろう。
不思議な顔をする絢香をニコリとみつめ
「若いっていいね」
と一言本心が出てしまった。

本当は聞いてみたかった
絢香は何人ものセフレがいる男を
独占したい派
そうならやめといた方がいい
泳がせて自由を愛する男には近ずかない方がいいと釘を刺したかった。

それは御局様の忠告なのだが
絢香にとっては嫉妬と思われてしまうのだろう だから教えても意味が無いかもと思ってしまう。

そんな絢香はピンクのルージュを チョパッと開けて
「課長、ぜーったい落とします
見てて下さいね先輩」
とグニュリと口紅をひとぬりしながら腕でガツッポーズ、ルージュの蓋をパチンと閉めてパパパッと唇を鳴らす。

「あ・・アハハハ꜆꜄꜆꜄꜆
そうなんだ・・・ね՞ ՞」

意気揚揚とミオに宣言する絢香はまだ23歳、もしかして陽向汰も絢香に傾くかもしれない
若さが武器
可愛くてナイスバディに甘え上手 こんな彼女はもしかしたら陽向汰のコレクション彼女 1位の座を手に入れるんじゃなかろうか ミオの心配はいらぬお世話かもしれない

ミオは気合いを ヨシッと入れる絢香を見てため息をつく。


「駒田さん」
陽向汰が絢香を呼んだ

「はーい❤」
パッと振り向いて絢香は甘い声で返事をした。

「ランチ行くぞ」
陽向汰はドカドカとミオの横を通り過ぎた、絢香はサンドイッチなのにミオも弁当を出したハズ
ミオには何のサプライズもない
「はーい❤」

陽向汰の後をプルプルオシリを振りながら歩くヒヨコは

嬉しそうについて行く

何人もの社員がその姿を目撃した
ザワザワと声がする。
絢香は少し恥ずかしそうで嬉しさ満載の笑顔を綻ばせた。

「ですよねー
畳と女は新しい方がいいって話もある」
ミオは諦めて陽向汰のデスクに弁当箱を取りに行った

アレ
弁当はカラになっていてサンドイッチは机の横に置きっぱ
なのにランチって?


「絢香の え?たべてない?」
ミオはカラになった弁当箱を回収しながらゴミ箱を覗いたがゴミは無かった。
弁当の中身捨ててなくて、空なのはヤッパ食ってるんだよね❓
弁当をしみじみ見つめる。



しばらくして絢香がプンプンしながら帰って来た

「ど、どうしたの?」

「課長ってば 掃除のおばちゃんにも
声掛けてランチ行きましょうって
誘って ドヤドヤドヤって五、六人
出てきて、丸いの 細いの ゴリラ系
もう 怖くてぇ」


「え?絢香行かなかったの?」

「行きましたよ💢」

「え?まさかコンビニ弁当?」

「違いますよ
ステーキハウスですよ」


「え?ならいいじゃん
美味しかった?」

「お、美味しかったンです ケド
おばちゃん達が課長に群がって
わ、わだじぃ(*꒦ິ³꒦ີ)
近寄れ無かったんでずうウェェェェン
なんか言ったら全員こっち見てメンチ切ってくるんですぅ
舌打ちもチッ チッ チッ チッチッって
順番にするんです、私何も言えなくてぇ〜。゚ぎょえーーーん」

「あらま」
ミオはついおばちゃん口調になってしまった。

「ま、課長は人気あるからね
そこ乗越えないと彼女には
なれないカモネ」

「。ビエェェェェェエン!!
グ、グヤシイー」

絢香の叫びで脈ナシだと部署のメンバーは、絢香を馬鹿にした笑いを見せた。


会社は12月に入り益々忙しくなった
クリスマスがどうのこうので、はしゃぎまくった学生時代が懐かしいぐらいだ


「課長、24日お暇ですか?
私、レストラン予約しましたー」
駒田 絢香が朝イチで聞いて来た
陽向汰はミオをチラリと見てミオも聞こえてるのに知らん顔

「ああ、オレちょっと爺様の家で
Xmas会があるんだ
爺様クリスチャンだから その日は親戚が集まるんだよ
正月より大事な行事だからね」


「って事は課長もクリスチャン
なんですか?」

「いや、爺さんと婆ちゃんだけだよ、宗派は色々
しかし歳だからさ孝行のつもりで
俺と従兄弟達は絶対集合なんだよ」


「えーぇ絢香も行きたーい
ダメですか?」


「遠いしさ、無理かな?
俺は会社の繁忙期だから土日を挟み休みを取って25日からトンボ帰りだよ」

「えーヤダつまんなーい」
絢香は甘えた声で上目遣いで陽向汰を見る。

陽向汰は参ったなと頭をカキカキ
そんな様子を見ながら
『そりゃそうだ遠すぎる
トンボ帰りしても四日はかかる
イギリスだもんね絢香が知ったら
余計行きたがると思う』
ミオは心で呟いた。


「あなた、どうなさったの?」
人混みのバス停に座り
繁忙期の忙しさに疲れボーッとして
ポロンと携帯を落としそうになったミオの携帯を老婦人がパッと手をだして掴んでくれた

彼女は優しそうで上品な70代半ば位の笑顔の素敵な人だった。


「いえ、大丈夫です
ありがとうございます」


ミオも明るく応えた
すると携帯がなった『冬華?』だ。
「今バスだから携帯使えない
後から電話するね」
とLIN〇

あの日以来の冬華からの電話だった

すると又携帯がなった、今度は陽向汰だ、同じく
同じ文章で返した。

「あらま、どちらにするか迷ってるの?」
その女性はメガネをフムフムと揺らしながら聞いて来た。

「え、あ、見ないでください」

「あ、ああ、ゴメンなさいね ՞ ՞
つい目がいっちゃったワ」
口調がキツかつたせいか少し取り乱していた。


「いえ、すみません、見ず知らずの方にキツく言いすぎました」

「私ね、昔1人の男が好きでね
もう何十年も前よ
でも彼は浮気ばかりしていて中々大事にされなくてね
でも もう1人私を好きで居てくれる
彼がいてね
寂しかったのかしらね
そっちの彼と付き合ったワ
もう30だったから子供が欲しくてね、でもある日バレたの彼が二番目に好きって事が」

「ェェッーヤバ」
ミオはスマホを持って無い左手で口を押さえた

「どうしてバレたんですか?」
つい先を知りたくて聞いてしまった

「お婆さん浮気したんですか?」
お婆さんは目を丸くして

「まさか
元彼からもう一度話をしたい
って連絡が来て断ったんだけど
電話の内容を彼に聞かれてしまったわ」

「どんな会話だったんです?」


「早く言って欲しかった
私は夫になる彼の子を妊娠したから、好きでも一緒にはなれないってね、それを一緒に居た彼に聞かれてから彼は変わった
やけになってね
私もそんな彼を止められなくて
彼に逆らえなくなった
彼の口癖は俺は二番目なのか
だったらお前も二番目だって」

「あらま失態ですね」


「そしたら彼に縁談が来ていたらしくて急に妾にしてやるって
その時はお腹に赤ちゃんがいて
妾になるしか無かった
そして2人目も妊娠してね」

「ひぇー新婚さんですか?」

「そんな甘いものじゃないわ
彼もモテたから奥さんも大変だったって聞いてる」

「はぁそうな・・・ん?」
彼女の顔を見ると違和感があった

「あの~
何処かで お会いしていませんか?」

「あらま、初めてお会いすると思いますよ、あ、バスが来たワ
年寄りのつまらない昔話を聞いて
くれてありがとう
よーく考えなさいな」

「え、ああ、あの~」
ミオがスックと立ち上がりお婆さんを見ると
👋"バイバイと手を振ってバスに乗りこんで行ったのでついつられてミオもバイバイ👋と手を振った。

その出来事は慌ただしい日常が重なり記憶から忘れて行った。