とにかく……乙女ゲームのサポートキャラ、黒うさぎのトリスタンを見つけなきゃ。

 自分に向けられた好感度を移すなんて真似、あのトリスタンにしか出来ない。クロエが頼んでそうして貰ったんだから、悪役令嬢の私が頼んだって何かの条件をつけられるかもしれないけど、それは出来るはずだ。

 黒うさぎのトリスタンが乙女ゲームヒロインと初めて出会うのは、王城にある『秘密の花園』と呼ばれる、美しい赤薔薇園。

 今の彼はもう役目を終えて、ヒロインのクロエの傍に居ないとなればと、そこに戻って暮らしていると考えるのが自然だ。

 とにかく、私へ好感度マックスの状態になっている三人のヒーローに会う前に、トリスタンに会って、どうにかして貰えるようにお願いしないと……。

「レイラお嬢様。城へと到着いたしました」

 御者からそう告げられ、私は何気なく馬車の扉を開いて、そして、次の瞬間ピシャリと閉めた。

 何かの用事で呼ばれていたのか、魔塔に所属するクーデレ魔法使いハイドがそこに立っていたからだ。