「……渋みのある年代物のワインだったんだ。迂闊だった」

 団長と副団長は、同時に大きなため息をついた。

 治安維持を受け持つ王都騎士団なので、王都にある怪しげな店も把握済だ。すぐに惚れ薬を売った魔女の店も特定されていた。私ももし将来怪しい店を持つ時は、騎士団へ平身低頭でいようと思う。

 悲しいかな欲深い人間は、清いものだけでは生きてはいけない。真っ黒は流石に取り締まるけどグレーな部分を保つため、決定的な違法行為があるまで泳がせているケースも多い。

 事務担当として王都騎士団に入団したばかりの私は、なんとなく流れで団長室へと入り澄ました顔で混じって「これは、すごい事になって来ました!」と、脳内では色めきだった多くの私の分身が手を叩いてはやし立て、お祭り騒ぎが始まっていた。

 どうなる。どうする。気になる結末。

 手に汗握る展開希望。女嫌いの騎士団長、一番嫌っている女に惚れ薬飲まされました事件!

 良くわからないけど、見回りに行っていた全員が集まっているし、私もそれとなく流れで着いてきた。けど、別に自分の仕事に戻れとも言われてないので、素知らぬ顔をして見守るしかない。