10月3日

『今日も、殴られた。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね
あいつなんて居なくなればいい。

こんな家、無くなればいい。あいつだけは許さない。』



いつも事の発端は、親父の、虫の居所と些細な出来事。


その日、親父の大好きな阪神は、
大嫌いな巨人に、勝てそうな、ゲームをひっくり返されてしまった。




親父の顔色は、変わってお酒を飲むピッチは
ぐんぐんあがっていく。




「何やってるんだよ、畜生。」親父の、言葉に家族がぞっとした。


お母さんは、
せかせかと台所に立って
何かを作り出した。

そこが、『事』が始まった時のお母さんの非難場所。


弟は、テレビに向かってヤジを飛ばしている。

阪神ファンでも無いくせに、親父の顔色を伺って、うまくヤジを飛ばす。

「今の球、お父さんのほうが打てるんじゃないかな!何やってんだよ!」

少しだけ、親父に笑みがこぼれた。


お母さんの横顔をみたら、お母さんにも、かすかに笑みがこぼれていた。




―――馬鹿みたい―――





真向かいに座ってしまったあたしは、
ただ、食べ物を口に運んでいく。




大好きなから揚げも、
イカのお刺身も、
味なんてよく分からない。

ただ早く食事を済ませて、
ひっそりと自分の部屋に帰りたかった。
面倒なことから、解放されたかった。

この、揚げ茄子さえ食べてしまえば、部屋に帰れる。




「あ‥」