クインの言っている言葉が理解出来なくて、私はぼんやりとした頭で考えた。何度か用を足した記憶はあるけれど、それ以外は確かにベッドに丸まって泣いていた。

 けれど、自分ではそんなにも長い時間は経っていると思えなかった。

 強い感情を感じたあの夜の中にまだ居て、ただ少しだけ……自分は泣いているだけなんだと。

「……ごめんなさい。心配して来てくれたのね。クイン」

 泣き過ぎて痛む頭を片手で触った私は幼いクインに心配をかけてしまったのかと謝れば、クインは苛立った声で言った。

「姉上。僕は何度も、言ったはずだよ。姉上と僕で、あの侯爵家を出ようと……姉上は姉のことを犠牲にして、自分だけは幸せになれと言われた弟の気持ちがわかる?」

 クインは悔しげに唇を噛んで、涙を流していた。そうだ。私はこの子を赤ん坊のまま、いつまでも幼いと勘違いしていたけど、そんな訳……絶対、なくて。

「クイン……私」