それに気がついたところで、時はもう遅かった。

 今ではもう、王妃様がベルセフォネ様を婚約者にと推薦し、デビュタントを済ませていないとしても彼女の年齢は足りている訳だから、何の問題もなく内定した婚約者として受け入れられているだろう。

 ギャレット様は私との婚約に関しても、何も言わずに受け入れたと聞く。

 生まれながらの王族である彼にしてみたら、両親がこうしろと言われればそうするだろうから。だから、彼にとってみれば私もベルセフォネ様も、同じなのだと思う。

 新しく婚約者となったベルセフォネ様にも私にしたように、優しく接するだろうし、彼の好意を隠さず伝えてくれるだろう。

 全部全部、納得していたはずだった。一年間だけ彼の婚約者を演じ、そして時が満ちれば辞退する。

 ギャレット様が予想外にも私を気に入ってくれたことは唯一の誤算だったけど、私は……やっぱり、何ひとつ納得出来ていないのかもしれない。

 だって、お母様が亡くならずお父様がしっかりしてくれて居れば、私は普通の令嬢のように夜会に出て求婚者を募り、それで何の問題もなく結婚していたはずだもの。