酒浸りになり無気力になってしまった父は、城から戻ってきた娘にそう宣言されても何も言わなかった。あの人も一応は、娘を犠牲にしたという罪悪感を持っているのかもしれない。

 城から離れた私は、多分一週間ほどは普通の顔を保って生活をしていた。

 食事を共にするイーサンは話し上手な商人らしく、興味を引くような面白い話をいくつも知っているので、私はそれを聞いて楽しそうに笑っていたと思う。

 自分の心の痛みにようやく気がついたのは、城を辞し十日ばかり過ぎた深夜のベッドの中だった。

 ふと聞こえたような気がした彼の声をきっかけに頭の中がギャレット様との思い出が回り、胸が苦しくて呼吸も上手く出来ない。目からは涙が次から次に流れて止まらない。体を丸くして自分の体を抱きしめても、まるで追い詰められるような強い不安を感じて居ても立ってもいられない。

 その時に、私はようやく気がついたのだ。

 私はあれだけまっすぐに愛を伝えてくれていたギャレット様を失ったというあまりにも大きな悲しみを、心をただ麻痺させて感じなくして、気が付かないふりをしていただけなんだと。