けれど、私は病で天に旅立つ前のお母様に、クインを立派に育て上げ侯爵にすると約束をした。

「……クイン。とにかく、これは私がやるって決めた事だから。お願いだから、良い子にしてて? ね?」

 ここ二年ほど父が借金をする悪い癖は、だいぶ収まっていた。何故かと言うと、借りたくてももうお金を貸してくれる人が周囲には居なくなっていたからだ。

 けど、私がギャレット様の婚約者になって状況が変わり、再度借金したことが想像以上に堪えているのかもしれない。

 眉を寄せ悲しそうな表情になったクインは私から視線を外し気まずそうに彷徨わせ、私が明日身につけるために置いておいたキャビネットの上にあるネックレスへと目を向けた。

「こんな……金で出来た豪華なネックレスなんて……姉上の肌は、金には弱いのに。これは、どうしたの?」

「あれは……ギャレット様に頂いたものよ。先祖代々伝わる、王太子の婚約者の証なの」

「え? 姉上のことを……何も調べず? 何も知らないじゃないか。何が婚約者だよ。あの脳筋王子」

 顔を顰めてクインが悪態をついたけれど、それを知らないのはギャレット様のせいではない。