私だって……怖くなる。急にギャレット様が心変わりして、私を捨て違う女の子に走ったら?

 そんなの、正気で居られる自信なんてない。

 ギャレット様はおそらく自分が乗ってきた馬車へと乗り込むと、騎士たちが雪崩れ込む民家を横目に馬車を出すように目で指示した。

「ローレンの言いたいことは、理解出来るしわかるよ。けど、俺は君に恋をしてよくよく理解したんだが、これは理屈ではない。君を気になって好きになったことは、そうだろうが……知れば知るほどに好きになり、自分でも止められなくなる。親から結婚しろと言われれば、王太子であれば従うべきだと思っていた……けど」

 そこで言葉を止めたギャレット様に、私は顔を近づけた。何度かそれをしたことのある彼だって、それは何を意味しているかわかっていると思う。

 だって、私はほんの数分前までこの人と一生キスが出来ないと絶望していたのだから。