きっと演技の上手い彼女は夫であるイエルク様にも、ギャレット様にも自分が何をしたかを知られていることを知っている。家族間だというのに、腹の内を探り合っているのだ。

 悪事を知られていると知りつつ、何事もなかったかのように振る舞えることに、私は恐ろしさを感じていた。

「そう……そうですね。私も、早く王妃様の件も、片付いたらと……思います」

「ああ……ローレンは何も心配しなくて良い。行こうか」


◇◆◇


 心地良いゆっくりとした揺れの中、私は目を覚ました。

 ギャレット様の愛馬の上で、寝てしまっていたらしい。ギャレット様はどこに行ったのだろうと顔を上げれば、彼は手綱を持って馬の隣を歩いていた。

「遠出をして疲れただろう。まだ、寝ていて良いよ」

 ミズヴェア王国の城の裏手にある山は、本来なら禁山とされていて、猟が許されるのは、年に一回だけだ。

 ここに自由に出入り出来るのは王族のみとされていて、何度か誘われていたけれど、なるべくギャレット様の傍に居ないようにしていた時は、行きたいけれど断っていた。