「知っているよ。だから、俺だってなんで好きなのに心を開いてくれないんだろうと思い、自分に出来る限り君に好意を伝えたはずだ。そうしたら、いつか別れなければならないから、冷たく見えるように演技していたことを知ったんだ」

「え。嫌です! はっ……恥ずかしい……」

 嘘でしょう。ギャレット様、それは当然のことのようにそう言ったけど、私は本当に必死だったのに!

「嫌ですって……まあ、もう良いだろう? 俺たちはもう名実ともに婚約者で、誰にもそれを阻まれることはない。結婚式を済ませれば、君にも公務を手伝ってもらうことになるだろうが、心配しなくて良い。祖父と父のおかげで、我が国は平和で当分安泰だ」

 ギャレット様は安心させるように笑ったけど、やっぱり私はあの人の存在が心配だった。

 王妃アニータ様は私がとある人物に脅されて婚約者を辞退するしかなかったという話を聞いていた時も、鷹揚に頷きそんな人物がいたのかと白々しく心配する振りもしていた。