それなのに、まだ彼のことが好きだから、こうしてみっともなく戻って来てしまった。

「……ごめんなさい。ごめんなさい。私っ」

 本当は、嫌な女のままで終わりたかった。

 あんな風に彼を傷つけておいて、私だって本当は辛かったなんて、思わせるなんて嫌だった。

 でも、こうして彼に会って良かった。私はどうしても……嫌われていたとしても、ギャレット様に会いたかった。

「ローレン。泣かないでくれ……おい。彼女を離せ。見ただろう。今、彼女が叫んでくれなければ、俺の命は危なかった」

 ギャレット様は泣いている私に近付き、何も言わずに自由になった私の手を取ると歩き出した。

 私はある程度、ここで彼に何かを言われることを覚悟はしていた。

 ギャレット様は素晴らしい男性だけど、王太子だからと言って、聖人でもなんでもない。

 数ヶ月、彼のすぐ近くに居た私が思うのは、苛立ったり傷つくことだってある普通の人だった。

 ギャレット様は離宮の人気のない場所まで移動すると、私の涙を指で拭って、長身をかがめて顔を近づけた。