その声を聞いて、ギャレット様がこちらを振り返ったと同時に、何本かの矢は放たれて、私の背後から何人かが剣を持って走り出した。

 まるでその時だけ特別に、時間がゆっくりと進んでいるように見えた。

 まず、私に見えたのはギャレット様は纏っていた長いマントを外しそれを振り矢をいなし、腰の剣を抜いたと思ったら、さっき走って向かって行った何人かが既に倒れていた。

 流石、『雷の子』ギャレット様。早業過ぎて、私の目では追い切れなかった。

 私の声を聞き、反射的に自分を狙う暗殺者を倒したものの、本人には全く今の状況がつかめないのか、ギャレット様はきょとんとした顔をしていた。

 でも、良かった……!! ギャレット様が、助かった!!

 強い安堵のためか、涙が溢れて止まらなくなった。私がしゃくりを上げて泣いている音だけが、しんとした広場に響いていた。

「え……本当にローレンか? 何故、君がここに居るんだ?」

 信じられないと言わんばかりの、ギャレット様。

 それは、本当に彼だって驚くと思う。私は彼の婚約者であることから逃げて、大富豪の手を取ったはずなのに。