「うちの学校さ、70年前に甲子園出場したらしいんだよ」



70年前。
昔なようで、なぜか最近にも思える。

私の耳にはまだ腐っていないんだと期待すら与えてきた。



「出場、したんだ。八木坂は」



出場した。

それが、それだけで、誇りになる。



「…知ってる」


「え、早見。おまえ野球とか興味なさそうなのに」


「ないよ。ないけど……八木坂高校が甲子園に行ったことだけは、知ってるの」



かつてお父さんは高校まで野球をしていた。

かつてお父さんは、甲子園を目指していた。


ピッチャーをしていたお父さんは、この八木坂高校の野球部のひとりとして、甲子園を夢見ていたんだ。


『俺は行けなかった』と言っていたお父さんの母校でもある、八木坂高等学校。



「目指すぶんには、…自由だよな」



なにを、とは、そこだけは友利はハッキリと言わなかった。