ぷいっとそっぽを向いていじけていると、「彗」と、初めて呼ばれた名前。



「っ、…なに?」



こんなにもはしゃいでしまった自分が恥ずかしくなって、お高くとまった返事をしながらチラリと視線を移す。



「俺がこの町を気に入ってる理由、わかった?」



こんな近くにも大きな星、ひとつ。


どこか悔しいけど、ここは認める。

この星空だけはお金を払っても見ることができないと思った。



「彗、って名前。彗星(すいせい)の彗だもんな」



…だから好きってわけでもないけど。

ただ、言われてから「そう言うこともできるよね」なんて思えた。



「お父さんが…、見てるのかな…」



死んだら星になる、なんて。

おとぎ話のようなものでしかないことは分かってる。

でも今だけは、今だけくらいは、信じてみてもいい気がした。



「見てるよ。きっと」


「……ほんと?」


「ああ。ほんと」



それだけで満足した私もどうかしている。

信じてくれる人間が近くにひとりでもいれば、信じつづけることができるんだと。