「平気。こんなところ、不審者もいないだろうし」


「…まあそーいう話はそこまで聞かねえけど、夜道が暗すぎて田んぼに落ちるっつー危険があるよな」


「……あと熊に遭遇ね」


「ついでに猿も」



動物園なの、この町。

冗談抜きで無料開放してる動物園なんじゃないの。



「早見のおかげで無事に直ったんだぜ、自転車。…うしろ乗る?」


「……交通違反だから」


「あー、そっか。こっちではみんなしてるから麻痺ってた」



やめてと言っても方向が同じだとか言って、ついてくる。

自転車のライトが照らしてくれる道を塞ぐように早歩き。


鬱陶しくなってわざとスピードを落とせば、「ふはっ」と何度か吹き出してきたり。


……めんどくさい、このひと。

ただ、こっちの道は街灯が多いだとか自販機があるだとか、さすが地元民だなとは思った。