「…っ、」



時間にすると、ほんの数秒。


当たり前だけど私には長く長く感じて、周りの音も消え去って。

こんなにも幸せなんだと、いまの瞬間だけで永遠とつづく幸福が全身を包み込んだ。



「───…たぶん、こーいうのは甲子園が終わったあとのが正しいかもだけど。……逆に俺の場合は気合い入りまくった」



きっと今、周りはすごい音が立っている。

部員たちも、保護者たちも、駆けつけた生徒たちも。

みんな似たような反応で私たちを囲んでいるはず。



「ってのが5割」



ごわり…?

意地悪な表情に変えて、熱に染まった私の頬を撫でてきた。



「残りの5割は……単純に今まで我慢してたぶん」



こんなふうにするんだ、とか。
そんな顔を見せてくれるんだ、とか。

考えることのほうが難しいから、私は潤んだ瞳の先でふわっと笑顔を乗せた。



「…かっわい。…あっ、いやっ、じゃ、またメールすっから」


「う、うん…」



私より赤くない…?と、逆に心配になるくらいの顔で。

逃げるようにしてバスへと乗り込もうとした友利は、ゴンッと入り口におでこをぶつけた。