「いよいよだね」
「おう」
「…私も応援、行くから」
「…待ってる」
無意識にも友利の手に触れていたのは、私。
少し驚いた顔を見せたものの、熱く甘い優しさで受け入れてくれる。
「もちろん初戦で帰ってくるつもりはねーから。2回戦以降の土を持ち帰る予定」
「…ちがう。優勝の土、でしょ」
「ははっ。…心意気は」
彼の夢はもう、叶ってしまったから。
あとはめいっぱい暴れてくるだけ。
今までの大会とはすべてが比にならない場所で、最後まで。
だから悔いなく戦ってきてほしい。
「さあ野球部、そろそろバスに乗り込むぞー。荷物はトランクな、かさばらせるなよ」
もっと話していたかった。
まだ「頑張れ」を言えていない。
繋いだ指をそっと離そうとすれば、なぜか逆に友利が力を入れてきた。
「帰ってきたらデートしようぜ。俺ん家で受験勉強もいーけど、夏休みだし、どっか行かね?」
「っ、そーいうのは今は考えるなバカ…、すぐ帰ってきたら怒るから…!」
「……じゃあ、すーちゃんからしか貰えないやつくれる?」
「え…?」