「八木坂は甲子園、出場するよ」



あなたが尊敬する親友が率いるチームを、どうか見守っていてください。

お父さんのぶんまで、私が見てくるね。


願いを込めて、お寺をあとにした。



「これ、あんたの好きなもの詰めてあるから!バスのなかで食べなさいね」


「気張って行けよ!!全力で楽しんでこい!」


「こっちこっち!はいっ、チーズっ」



やっぱりすごい人だな…。

バスが停車した校門前、あのときに似た光景。


宿舎へ向かう息子へとお弁当を渡すお母さん、バシッと背中を叩くお父さん、写真を撮っている友達たち。

「お兄ちゃん頑張って」と、エールを送る兄弟たち。


制服姿の選手たちは、凛々しくも爽やかに笑っていた。



「彗!」



この声だけはどうしたって聞き取ってしまうんだから、仕方ない。

駆け寄ってくる友利は、埋もれそうな私を簡単に見つけ出す。