「嘘です。ほら、CMの・・・なんちゃらっていう曲も、なんちゃらっていうドラマも、えっと」
「全然覚えてないじゃん。良いよ別に、無理に応援しなくても」

溜め息を吐く彼に「ごめんなさい」と謝る。

しかし素直に謝ったところで「普通お世辞だけでも応援してますって言わない?」と、また苛立ちを募らせる。

理不尽だと文句を言いたかったけれど、その綺麗な顔に免じて飲み込んであげた。

「タッタイマ、ファンニナッタカモ。ア〜カッコイイナ〜」
「片言すぎる。演技も下手」
「・・・」

何だこの人、プライドがエベレストかよ。素人に演技力求めるなよ。

今の私の顔はチベットスナギツネ状態である。

これ以上言い返せる雰囲気でもなく、話題を変えようと口を開いた。

「あまり私に話し掛けていると、そのうち刺されちゃいますよ」

大体、芸能人ともあろう人が特定の女子大生に話しかけてもいいのだろうか。しかも私のような平凡な一般人に、だ。