「相馬さんの海外転勤を知った由里が、婚約破棄を申し出たことを後で知った。私たちはすぐに相馬さんに連絡をして、由里に説明をするように言ったの」

「「由里には家のためではなく、心から俺を選んで欲しいんです。大丈夫です。何度でも初めから由里に愛してもらえるように頑張るので」。この二年、私たちは相馬さんに感謝しかないわ。由里、最後の私たちからのお願いよ」

「本当に愛している人と幸せになって頂戴。家のことなど何も気にせずに」

そう言った両親は、私の手から婚約者の名簿を奪う。

そして涙が止まらない私にハンカチを渡して、その場を離れる。

私はゆっくりと携帯を取り出し、相馬さんへの発信ボタンを押した。

震えた手で押した携帯が、発信音に変わる。