「そ、そんな根も葉もないことを!」

 ガイゼルが烈火のごとく怒った。

「お前、オルグと言ったな、一介の事務官風情がそんなことを言ってどうなるかわかっているのか、この身の程知らずがっ!」

 オルグは冷笑を浮かべた。そして、
「そうおっしゃると思っておりました」

 彼は会議場の入口に合図をした、そこにあの護衛兵がいた。
 兵は女を伴って入って来る。
 娼館にいたベスだった。ガイゼルの子供を生んだ当の本人だった。

 ガイゼルが絶句した。
 蒼白になってベスを見た。
 ガタガタと震え出した。

 そんな成り行きを、会議場の皆が見ていた。

 シュテルツが、
「それでは、ガイゼル殿には別室にご同行願いましょう。事の真偽は係官が調査します。伯はこの場から速やかに立ち去っていただきます」

 ガイゼルが力なくうなだれた、フラフラと出口に歩いて行く。

 シュテルツは続けて、
「あなたには追って沙汰があると思います。娼館の訴えもさることながら、この国の次期国王になられるであろう方を愚弄した不敬、それは途轍もない大罪になると判断いたします。そうお心得ください」

 歩いていたガイゼルを、会議場の警備兵が拘束した。