シュテルツが、
「宰相顧問殿、その筋違いなこととは一体どういうことですか」

「娼館から引き取ったというのは、ガイゼル伯、あなたのお子様ですね。三か月前、あなたは馴染みの娼婦に一人の男の子を生ませた。いまだに後継者に恵まれないあなたはその子を無理やり引き取ったのだ」

 会場から言葉にならない声がでる。

 ガイゼルは満面朱を注いだ。
「な、な、なぜそんなことをっ、なぜお前風情が、そんな有りもしないことを!」

 オルグは手で制すると、
「先ほど申し上げました通り、担当している庶務には市民から要望や苦情が上がってまいります。その訴えの中に、あなたの名前があったのです」

 そして訴状の仔細を述べた。それは次のようなものだった。

 王都のはずれに一軒の娼館があり、その店主が訴状を提出した。支払うと約束された金が反故(ほご)にされたとの訴えだった。

 約束を破棄したのはガイゼル伯だった。
 馴染みの娼婦に子を生ませたのも彼だった。ガイゼルは子を引き取る代わりにまとまった金を払うと約束した。しかし期限が過ぎても履行されなかったのだ。

 店主はその事情を王宮の庶務に訴えた。それをオルグが読んだのだった。
 
 午前中の会議で、ガイゼルはアーロンを窮地に追い込む発言をした。
 オルグはシュテルツの側で聞いていた、そして即座に娼館に向かったのだ。