数か月前に、突然アーロン二世という彼が現れたのだ。

「今のアーロン様は三十歳、以前のあのアーロン様のご子息ということになっていますよね」
「はい」
「でも、そのお母上のベアトリス様が亡くなったのはもう五十年近く前のこと。そうじゃありませんか」
「それがいったい・・っ、あっ!」
「どういう事なんですか、これは」
 二人が固まった。

 数か月前まではアーロンは五十歳前の壮年だった。
 それがある日、衝撃の出来事が起こったのだ。

 あの日はワイトとシュテルツと一緒の部屋にいた、そのとき壮年のア―ロンが突然いなくなったのだ。
 その代りのように彼の隠し子だという青年が現れた。三十歳の若い彼はアーロン二世と名乗って家人と接するようになった。
 ひどく不可解で衝撃の出来事だった。

 しかしその出来事を家人はあっさり受け入れていった。
 前のア―ロンと、急に現れた若いアーロンの類似点が多すぎたからだ。
 若いアーロンは違和感なく家を仕切り、王宮でも司令官の任をこなしている。

 声も同じ、顔も若い頃のア―ロンと寸分たがわない。その手腕をもだ。

 今ではあんな出来事があったことが嘘のように思えた。
 あの日の、あの一点だけが気にかかる。

「ご容姿も声もお人柄も、まるで同一人物に思えますよね」
「ただ歳だけが違っていて」
 互いに顔を見合わせる。

「なんなのでしょう、これはいったい」
「なんなのでしょうか、いったい」


          * * * * *