リズと執事が植え込みの陰から見ていた。
「なんとお優しい、突然やって来たティムにあんな言葉をかけられて」
「しかも彼に傷付けられたのですぞ」
「それだけアーロン様の(うつわ)が大きいということですよ」
 感激したように見入っている。

「軍隊に入らなくても剣の稽古をするのはどうだ。あそこにヴェンがいるだろう。彼に習ってみるといい、あいつもかなりの使い手だからな」
 アーロン達を遠くからヴェンが見ていた。

 ティムは出歩けるようになった。しかしヴェンが監視役で付いていることが条件だった。

 と、そのとき門番が近づいて来た。
 背後に客人を連れている、シュテルツの使いのオルグだった。
「シュテルツ様がぜひ来ていただきたいとおっしゃっています」
「どうしたのだ、急に」
「お話ししたい事があるそうです。出来れば今すぐお願いできないかと」
 真剣な顔をしていた。

 出かけるというアーロンを執事とリズが見送っている。

「何かあったのでしょうか、お使いの方が深刻そうでしたが」
 執事が首を傾げ、リズは遠ざかる彼らを見ていた。

 そのアーロンの影が消えたとき、あっと声を出した。

「どうしたのですか、急に」
「ちょっと待ってください。さっきアーロン様はこうおっしゃいましたよね、俺が三歳のとき母が亡くなったのだと」

「そうですが、それがいったい?」
「おかしくありませんか、あのアーロン様は、実はアーロン二世様でしょう?」
「そうですが」