ネイラはハインツ家の居間に通された。
平民の彼女は貴族の屋敷と言えばラクレス家しか知らない。そのラクレス家よりはるかに大きく豪奢な設えだった。驚いたように見回していると、
「ゆっくりしてね、もしかしてお腹が空いているんじゃないの。それから着替えとか」
矢継ぎ早に声がかかる。
「すぐ夕食の用意が出来るわ。そしたら一緒にダイニングへ行きましょう」
手を取らんばかりのソフィーに、
「あの、息子はどこに、どこへ連れて行かれたのでしょう」
「息子って、さっきの? ネイラより先に馬車から降りた、あの?」
わずかな月明りでは顔が見えなかったのだ。
「はい。そのティムが大それたことをしてしまって」
「大それたこと?」
「騎士様に、ご身分のありそうな騎士様に怪我を負わせたのです、ナイフで切りかかって」
「ええっ?」
そのとき、
「なんとか大丈夫だ、王宮で手当てをしたからな」
ア―ロンが入って来た。
彼は左肩から腕にかけて分厚い包帯を巻いていた。
平民の彼女は貴族の屋敷と言えばラクレス家しか知らない。そのラクレス家よりはるかに大きく豪奢な設えだった。驚いたように見回していると、
「ゆっくりしてね、もしかしてお腹が空いているんじゃないの。それから着替えとか」
矢継ぎ早に声がかかる。
「すぐ夕食の用意が出来るわ。そしたら一緒にダイニングへ行きましょう」
手を取らんばかりのソフィーに、
「あの、息子はどこに、どこへ連れて行かれたのでしょう」
「息子って、さっきの? ネイラより先に馬車から降りた、あの?」
わずかな月明りでは顔が見えなかったのだ。
「はい。そのティムが大それたことをしてしまって」
「大それたこと?」
「騎士様に、ご身分のありそうな騎士様に怪我を負わせたのです、ナイフで切りかかって」
「ええっ?」
そのとき、
「なんとか大丈夫だ、王宮で手当てをしたからな」
ア―ロンが入って来た。
彼は左肩から腕にかけて分厚い包帯を巻いていた。