動転している母親に、
「俺に処罰されると思ったんだろうな」
 苦虫を潰すように笑った。

「帰りたいならお前だけでも連れて行こう。意外な人物に会わせることが出来るかもしれんぞ、俺の屋敷で」
「え?」
 
「彼女は帰りを待っているはずだ、今か今かとな」
 ア―ロンがふっと笑う。

 そのときだった。

 物陰から光るものが飛び出した。
 それはナイフで、女めがけて振り下ろされた。
 
 ア―ロンがとっさに振り払おうとした。
 しかし女も気づいて身をかわそうとする、それで目測が変わった。

 ナイフはアーロンの肩をかすめた。
 握っていたのはさっきの息子だった。

 アーロンを手にかけたことに驚いて立ちすくむ。
「ちっ、違うんだ、俺はお袋をやろうとしたんだ、これ以上しゃべらないように。そうだ、威嚇しようとしただけなんだ」
 震えながらナイフを落とした。

 彼を睨みながら、アーロンが肩を押さえた。

 鮮血が流れ出ていた。


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