フレッグ領の兵に引き継ぎをする。
 領主に挨拶を済ませ、あとは最後の一隊をひきいて帰ろうとしていた。

 と、遠くから問答する声が聞こえた。
「無理だ、もう避難民の馬車は出てしまったのだ」

 フレッグ領の兵が一組の男女に対していた。
 中年の女と二十歳前後の青年で、親子のように見えた。

「そこを何とかお願いします、私らはもう帰る手立てがないのです」
 女が懸命に頼んでいる。二人とも泥にまみれた姿だった。

「うるさいっ。この間もそう言ってすり寄って来る者がいたのだ。だが奴らはバッハスの間者だった。お前らが違うと言い切れるのか」
 居丈高に追い払おうとする。

 すると息子が、
「分かったよ、そうやっていつも俺らは厄介者扱いされるんだ。いつも虫けらのように扱われるんだ」
「なんだとっ」
 兵が剣に手をかけた。
 息子がとびすさる。