「ありがたいことだ。これでマリンドウに帰れます」
 宰相が感謝の念を述べる。

 彼と検問所の職員は国軍の一隊が護衛して送ることになった。
「アーロン殿、あなたにはまたお会いする気がいたします。国を代表しての面会があるかと。そのときはぜひよろしくお願いします」
 ていねいに頭を下げた。

 避難民は子供と老人を馬車に乗せた。国軍が護衛してフレッグ領の内部まで行く、そこまで誘導すればバッハスの危険はなかった。

 あとは戦火がフレッグ領に飛び火しないよう国境線を守るだけだ。
 その境界線にグリント―ル国軍とフレッグの領兵が陣取った。
 頭上に両軍の旗をたなびかせ、センダの町を睨む。

 そのままずっと様子をうかがっていた。しかし国境線は静まったままだった。
 センダの町は焼き尽くされ、バッハス両軍は死闘を尽くした、それがありありとわかった。

 戦いは終焉を告げていた。


 国軍が徐々に帰還を始めた。
 第一団、第二団を見送ってア―ロン一行も出発の準備をする。

 このまま何ごともなくここを発てるはずだった。
 ・・しかし。