「グリントールは脱出の手立てがおありでしょうか」
「郊外に国軍を連れて来ています。しかしこのセンダに住んでいた同胞五十人を引き連れてそこへ行くまでが問題かと」

「なるほど。こちらの人員は検問所の職員が三人、会見のために来た者が私を含めて十一人です。それで、遺憾ながら軍隊は連れて来ていないのです、パレス王の制圧下で平和裏に会見ができると思ったからです」
 そう言って頭を抱えた。

 と、検問所の職員が飛び込んできた。
「大変です、近くに火の手が上がっています、こっちに延焼してきています」
「なんだとっ」

 窓からも真っ赤な炎が見えた。
「逃げましょう、このままでは焼け死んでしまう」
「しかし通りはバッハスの両軍に囲まれています」

 パレス軍ならまだしも、・・いやパレス軍と言えどこの状況でどんな行動に出るのか。

 検問所の外では避難民が騒ぎ始めた。
 炎が迫ってきているのだ。

 誰もが押し黙る。
 ゴーゴーというのは炎の音だろうか、逃げ惑う人の声だろうか。