「おう、しっかり養生しているか」
 陽気に声をかけた。

 センダ出立の打ち合わせに王宮を訪れた。その合間に病室を訪れる。

 シュテルツは深く頭を下げ、
「貴殿には返す返すも申し訳なく。あの侵攻時に陣頭指揮を取っていた本人にバッハスの国家元首と対面させるなどと」

「何をそんなにかしこまって」
 アーロンは椅子を引き寄せて、
「あのバッハス軍が迫ったとき、自軍の兵は命を惜しまず戦ってくれたのだ。その代償で重傷を負った者もいる、いまだに寝たきりの者もいる」

「・・・・」

「センダへ行けばバッハスの前王軍に奇襲されるかもしれない。しかしそれを恐れていたら身を呈して戦ってくれた彼らになんと言えばいいのだ。顔向さえも出来ないだろう」

 穏やかな笑みを浮かべて言った。


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