ア―ロンが苦笑しながら自室に向かう。
 と、その足がはたと止まった。
「なんだ、こうすればいいじゃないか」

 仔細を聞いてリズが、
「なるほど、それは名案です。それなら明日にでもお式が出来ますね」
 片や執事は、
「明日ですか。さすがにそれは少々」

「執事殿、善は急げですよ。私はすぐにでもソフィー様をこのお屋敷の奥様にしてあげたいのです」
「はあ」

「お忘れですか、この間アーロン様が王宮から帰って来たときのことを。昼過ぎに部屋から出られたソフィー様に」
「申し上げてしまいました。お早うございますと」

「おまけに、朝食のご準備は出来ておりますと」
「あれは私の一生の不覚です。何という事を申し上げてしまったのか。返す返すもソフィー様に申し訳なく」
 大罪を犯したように恐縮している。

「それだと俺にもとばっちりが来そうだな」
 苦笑した(あるじ)に、
「あ、いえ、そんなつもりでは」

「だが明日は無理だ。王宮に出向く用が出来たのだ」
 さっき受け取ったシュテルツからの手紙を見せた。

「では明後日にいたしましょう。執事殿、それでよろしいですね」
「私に異存はございません」
 即座に答えた。


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