「シュテルツ様!」
 側近が駆け寄った。

 影は走り去ろうとし、兵が後を追う。
 だがたちまち闇の中に消えた。

 影は、被災した建物から金目の物を奪い取ろうとする盗人だった。

 兵がシュテルツを抱き起す。
「これは!」
 肩から鮮血が滴っていた。

「急げっ、すぐ医者に見せるのだ」
「ど、どこへお運びしますか」

「とりあえず王宮だ、あそこなら医務官がいる」
「そうだ、ご自宅はまだ遠い。王宮ならすぐそこだからな」

 シュテルツを馬車に運び、慌ただしく走り出した。


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