『撒かれるなよ』
 アーロンの声がまた聞こえた。

 背の高い雑草が揺れている。その穂先がジグザグに動くのを見て、
「だったら仕方ないね。じゃ気をつけて行くんだよ」
 暗闇に告げた。

 肩の荷をおろして回れ右をする。
 しばらく下ってから岩影に身を寄せた。
 
 前方でフクロウが鳴いていた、その声がふいに止まる。

 ヴェンはニヤリと笑った。
 そこに向かって行った。


       * * * * *