「それがその、こんな置手紙が」
 そこには、
【緊急の事態だ。しばらく個室に籠る・・ことにする。後は頼む】
 
「この緊急時にいったい何を! いい歳をしてそこらの若造のようにっ」

 と、シュテルツは何かを思い出して、
「あ、いや、やつは今は本当に若者なのだが」
 
 脱力するように座り込んだ。


 アーロンは山岳地帯まで来た。
 向こうに見えるバッハス軍の数に目を見張る。

 空を見上げた。
 斥候隊が放った鷹が旋回していた。

「おい、遅いぞ」
 振り返った隊長が目を見張った。
「お前はいったい誰だ」
 偵察にでた部下とは違う男だった。

「王宮から派遣された者だ、あの伝書鳩の急報を受けてな」
 男が斥候兵の認証を出した。

「本物だな、だったら存分に働いてもらうぞ、今は国の一大事だからな」