ヴェンは岩場によじ登った。
 バッハス軍が手に取るように見える。

 地を埋め尽くす大軍がうごめいていた。

 前方を見ていたとき近くの視野で何かを感じた。
 眼下でチラチラ動く影がある。

 草むらから兵が見え隠れしている。
 バッハス隊がここの中腹を目指していた。


 王宮の指令室に伝書鳩の文がもたらされた。

【山崩れのためバッハスの小隊三十名が進路変更。洞窟への道を前進中】
 アーロンの顔色が変わった。


 ヴェンは洞窟に飛び込むと、
「大変だ、一部の隊が近づいているぞ」

「ええっ、この中腹には来ないんじゃなかったの」
「わからない、だが敵が迫っているんだ」
 

          * * * * *