「ど、ドキドキしすぎてダメっ…」



それはあまりにも直球すぎるもので。



…どうしよう、めっちゃ目が合うし恥ずか死にそう…。



なるちゃんの方を見ないと伝わらないと思い、見上げる形になっていたのがこれまた恥ずかしい。



「…それ、計算?」



羞恥心に耐えていたらなるちゃんお得意の小さな声が落ち、いつものごとく聞きこぼしてしまった。



「…?なるちゃ───」



なんか様子がおかしくて、聞き返そうとしたとき。



「ごめん、後で殴って」



互いの唇が、重なった。



触れるだけの軽いキス。



それなのに、私にはその一瞬がとても長く感じた。



「…っ」



…しちゃった、なるちゃんと。



でも……どうしてかな。



ぜんぜん、嫌じゃなかった。



むしろ、あのまま時間が止まればいいのに…とか。



そんなこと思っちゃった。



…だからね、なるちゃん。



「…海琴、本当にごめ───」




「謝らないで、なるちゃん」



「え…?」



今のを“なかったこと”にだけは、して欲しくないよ。



「…謝ったら、私が嫌がってるみたいでしょ」



ちゃんと、刻んで。