「それ持ったまま入れないだろ」
…優しいな、ほんと。
「へへっ、ありがと」
思わず顔がにやけそう…というか、にやけた。
「…可愛い」
なるちゃんがボソッとなにか呟いたけれど、あいにく私の耳はマサイ族じゃない。
「うん?」
聞きとれなかったから、首を傾げてなるちゃんを見上げてみたけど。
「なんでもねぇよ」
ってドアを開けながら誤魔化されちゃった。
だから私も「ふーん」って言っとくね。
なるちゃんとおそろい。
なるちゃんも私に続いて部屋に入ると、ガチャりと閉めた。
……二人っきり、だ。
この部屋に鍵はついてないけれど、途端に緊張してしまう。
今まではなんとも思わなかったのに、告白されてからはどうも意識しちゃって仕方がないの。
「…えと、はい。これ、なるちゃんの──」
それでも頑張るしかないから、なるちゃん専用のマグカップを渡そうとしたのに。
「……海琴は、やっぱり幼なじみのままでいたい?」
いつものごとく、予告もなしに爆弾を落とされた。