それからも、私たちは交互にカードを触っていたのだが、毎回、私のターンは長引いていた。

「降参。勝てねぇわ」

私が10ペアを作ったところで、ひとつもペアを作れていなかった彼は、ため息混じりにそう言い、天を仰いだ。

「チーズケーキで」

勝てることを確信しながら遊んでいた私は、すでに決めていたケーキの種類を口にする。

彼はやれやれというかのような態度で、カバンから財布を出して席を立つ。

けれど、レジへと歩き出す前に私に顔を向けた。

「いくら“運がいい”って言ってもさ、水城はエスパーじゃねぇんだから、人の心までは読めないだろ?」

美奈の件だと思って、私の表情はかたくなる。

「一度依頼は引き受けたし、ちゃんと動いてやるよ。でも、一度はマツヤマミナと向き合って、話を聞いてこい」

再び、話し合うことをすすめられた。

気が進まなくてうつむくと、彼は言葉を付け足してくる。

「そういう話をしづらい関係でも、必要なことだよ。じゃないと、俺もどう動いていいかわかんねぇからさ。……今、なんで泣いてるのかってのも知っておきたいし」

「え?」

泣いている。そう聞いて、慌てて4階へ目を向けると、言葉通り、ベンチに腰かけている美奈は顔を手で覆っていた。