「信じられない。……こういうのは、普通、他人(ひと)には見せないモノなんだよ? ほら、髪で隠して!」

呆れた口ぶりの彼女。

言われるまま髪を触る私は、今のこの状況に戸惑っていた。

――美奈と普通に話せている。

関係が元に戻ったのだと思っていいのかな?

鏡を通して見つめた美奈の顔。

私の首元に目を向けていた彼女は、視線に気づいて、鏡ごしにこっちを見た。

けれど、状況はまだ元通りになっていないらしく、美奈はスッと顔をそむけた。

「……それ、この前の人がつけたの?」

間を置いてから、たずねられる。

「多分、そうかも」

答えると、彼女は再びため息をつく。

「大丈夫なの? その人。遊んでそうに思ったけど……」

キングの派手な外見を怪しんでいるようだった。

「軽く見えるけど、遊ばれているわけじゃないから」

そもそも、キスは依頼したからされているわけで。

キスマークというモノまでつけられるとは思っていなかったけれど、美奈が考えているような関係ではない。

心配してくれているように感じて、安心させる言葉を口にすると、美奈は黙り込んでしまった。