どこかでぶつけたりしたのだろうか。

爪でかいた記憶もなくて不思議に思っていると、美奈は、

「でも吸われたわけじゃないでしょ? キスマークって口で吸われて出来る痕(あと)だから」

そう言って、保険医の先生が腰かける椅子に座った。

キスマークというモノがあることを初めて知った私は、鏡ごしにそれを見つめていたのだけれど。

「……あ」

首にキスをされた昨日を思い出す。

吸われていた気はしなかったけれど、途中でチクリという痛みは感じていた。

あのときついた痕なのだろうか。

「え、ウソでしょ? マジでキスマークなの?」

ハッとした私の反応を見て、座ったばかりの美奈が驚くように立ちあがる。

「や、わかんない……」

「堂々としてるから違うと思ってた! なんで隠してないの!?」

「え……、だって。これに気づいたの、今だもん!」

「もー、貸して。貼ってあげるから!」

美奈は私の手から絆創膏を奪い取り、ため息をつきながら首に貼ってくれる。