「あの人がっていうことじゃなくて、誰ともそうなる気はないの」
「頑なね。それは歩くんが原因?」
「……また傷つけちゃうかもしれないし」
わたしの気持ちがはっきりしなかったから、あんなに歩くんを傷つけてしまった。
また同じ間違いをしてしまうかもしれない。
そう思うと、次に進むのがどうしても怖かった。
肝心なときに、何もできないんだ、わたしは。
「そう。別に柚葉が決めたことならいいんだけどね。後悔しないのなら」
それ以上、七海は何も言わなかった。
それからターミナルに着いたと同時くらいに、あの男の車もちょうどやってくるところだった。
タイミングの良さに驚いていると、助手席の窓が開いてラフな格好のあの男が「どうぞ」と言った。
そして、七海の隣に乗り込もうとすると、彼女に「いやいや、柚葉は助手席でしょ」と言われ、強引にいつもの位置に座らされる。
「松葉さん、私まで送っていただいてありがとうございます」
「いーえ、柚葉ちゃんのお友達だから特別にね。家まで案内よろしくね」
「はーい。お願いします」