「えっと街にいますけど。そうですね。今ちょうど帰ろうかって話してたところです」
「そう、わかった。じゃあ、駅のターミナルまで出てこられる?迎えに行くから。お友達もね」
「え……」
「15分もあるからつけると思う。少ししたら店から出て来てね」
あの男はわたしの返事も聞かずに、さっさと電話を切ってしまった。
きっとあのまま電話をつなぎ続けていたら、わたしに断られるとでも思ったのだろう。
わたしの言いそうなことややりそうなことを、日に日に理解されている気がして少し複雑な気分だ。
「なんだって?」
「えっと……迎えに来てくれるって」
「なによ、柚葉。いい人いないって言ってたのに。いるじゃない、ちゃんと」
「なんかね、七海のことも送っていってくれるみたい」
「あら、ほんとう?いい人ね」