…………


ない。ないわ。


ひと目惚れされたはずはない。


そして、これからも私ごときに恋愛感情が向けられることはないって断言できる。


今の魔王様には、友達がいなくて寂しかったところに、召喚してしまった負い目がプラスされていると思って間違いないだろう。


だから、自分の花嫁として温かく迎え入れてくれているだけなんだ。


あれ? そういえば……


魔王様って『一生独身でいいと思って』たんじゃなかった?


そうだ、確かにそう言ってたよ!


てことは、私は名目上の花嫁に収まっているだけでいいってこと!?


なるほど! 理解できた。


そうとわかれば、私は心置きなく魔王様と友達になるだけだ。


心が一気に晴れた。魔界にいる限り、実際の空ではお目にかかれないほどの快晴だ!


「別棟の案内は以上です。客間に戻ってお茶にしましょう。先ほど買ってきたスイーツもご賞味くださいね」

「わー、魔界のスイーツってどんなか楽しみです!」


リップサービスなんかではなくて、ホントに楽しみに感じられた。