このときまで、自分が魔王様の花嫁だって意識が、きれいにすっぽりと抜け落ちていた。
昨日寝てしまうまでは、あんなに悩んでいたはずなのに、いつの間に?
今朝、レオさんと話をしていたときにも『花嫁』って言葉は出ていたはずだ。
それが、どの時点からかは不明だけれど、『花嫁』の意味を完全にスルーしてしまっていたことに、今気がついた。
『花嫁』という言葉に対して、感覚が麻痺してしまっていた?
それとも、他に気になる話が盛りだくさんだったから、そっちに気を取られた?
どうせ元の世界に帰れないんだったら、レオさんとリナさんみたいに魔王様と別棟で仲よく暮らしたい、とは思う。
使い魔以外に、生きている存在として、私が魔王様の近くにいてあげられたら……って、そんな気持ちが私の中ではっきりと芽生え始めてもいる。
だけどそれらは、『花嫁』としてではなくて、友達というか……ルームメイトというか……
漠然とだけどイメージしてたのはそんなので……
だ、第一、あんなイケメンで地位もある大人の人が、私なんかを好きになるとかある?