「黙れっ!!」


広いこの部屋にそのひと言は響き渡り、そして静まり返った。


「僕は、我が花嫁に相応しい娘を召喚した。そしてこのミ……クル?が召喚されたのだ」


あっ、魔王様、私の名前はちょっと自信なさ気。


笑いそうになったけれど、そういう場面でないことはわかる。


私は口もとを引き結んだ。


それと同時に自分にそんな余裕があることに驚きもした。


「し、しかし!」

「何だ? 僕の召喚魔法を疑うとでも?」

「と、とんでもありませんっ。そのようなことは決して、」

「なら黙れ! 僕の花嫁はこのミクルだ。そして召喚の儀式前に宣言した通り、僕の花嫁はただひとり。今日はもう疲れた。これにて解散!」


魔王様は私の腕を引っ張り上げようとした。


「痛っ!」


魔王様は私の耳元で囁いた。


「悪かった。急いでて。でも、危険な目に遭いたくなければ、僕と一緒においで。早くっ」