「ミクル様がまだ花嫁の自覚なくても、それだけは頼むよ」
「でも……私なんかが仲よくしたって……」
「『私なんか』じゃないんだって。昨日も言ったけど、魔王様はミクル様のことを自分の花嫁だって認識してる。それも唯一の。この重大さ、わかる? 花嫁が何人いてもいいのに、ただひとりって決めてるんだよ?」
「えっ、何人いてもいい!?」
「驚くポイント、そこじゃないから!」
いやいやいや、驚くから!
「なら、前・魔王様もたくさんお婿さんがいたんですか?」
「ううん。前・魔王様は結婚してない」
「あれ? なら魔王様のお父さんは?」
「わかんない」
「わかんない?」
「うん。父親が誰だか、魔界中のみんな知らないんだって。前・魔王様って、そういうとこ自由な人なんだよ。魔王様にも父親がいればよかったんだろうなー。前・魔王様は、母親って感じじゃなかったし。魔王様のこと、息子っていうより後継者として育ててたんだよね。だから本気で孤独なんだよ、魔王様って」
「そんな……」