「あ、あの……私、花嫁じゃないです。勘違いしてますよ。それと私は家に帰りたいんですけど……」
「何?」
魔王様が私をにらんだ。
ひいいぃぃー、この人イケメンだからじゃなくて、眼光が鋭いから魔王様役に選ばれたのかも!?
周りもザワついた。
そして、ひとりの高慢ちきそうなおじさんがわざわざ顎を上げ、私を見下ろすようにして言った。
「魔王様、こんなみすぼらしい娘など、さっさと送り帰しましょう。やはり魔王様の花嫁には、ぜひぜひ私めの長女を!」
すると次々に声が上がった。
「貴方のご息女は筋力ばかりが取り柄ではないですか。その点、私の三女は魔族一といわれる器量よしです。魔王様と並んでも見劣りしません」
「それでしたら、我が家の二女は……」
「いやいや……」
必死の売り込みは、真に迫っていた。
そして魔王様のイライラを募らせる様子も。
仮装行列の練習じゃなくて、演劇の練習中だった?